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その17  芝居に欠かせぬ小道具は?
 芝居に登場する小道具は数限りなくありますが、ほとんど毎月のように登場するものといえば、刀、草履、扇子、手拭・・・・また、のれんや床の間の掛け軸なども小道具ですが、さらに忘れてならないものに「煙管(きせる)があります。
 先月の「助六」では『煙管の雨が降るようだ・・・』と、花魁たちが助六の手の上に煙管の山を築きましたし、今月の「桜姫」の中でも煙草盆が登場、芝居のちょっとしたきっかけを演出します。
 ところで「煙管」と書いて「きせる」とすんなり読める人は日本人の中にどれくらいいるでしょう? うっかりすると「パイプ」と読んでしまいませんか? そもそも「タバコ」自体がポルトガル語で「煙草」は当て字だといわれますし、「煙管」という漢字もひょっとすると後の当て字かもしれませんね。読みにくいとはいえ文章にしたとき「きせる」では何となくイメージが湧きませんし、かといって「キセル」と書くと「無賃乗車」のようです。
 
 余談ですが(実はこれが本題?)、煙管の構造といえば両端が金属で、間の部分が竹で出来ているので「中抜き」乗車をキセルと呼ぶようになったわけですが、近頃は自動改札機がすっかり普及し、駅員の目をかすめてスリルを味わうキセル乗車はすっかり姿を消してしまいました。この言葉もいずれ死語となるのでしょうね。
 
 話をちょっと芝居に戻しましょう。煙管の活躍する場面といえば「弁天小僧」が『わっちゃあ、ほんの頭数さ』と、ちょっとすねたような口調でプカーッと吹かすところがなんともチャーミング、「忠臣蔵六段目」では縞の財布と煙管が勘平の持ち道具として重要、煙管を持った手にどこか色気を感じさせ、また震える手で勘平の動揺ぶりが表現されます。特大の煙管が登場するのは「毛抜」・・・『毛抜は踊る、煙管は踊らぬ』と歌舞伎には珍しく妙に理科系のおとぎ噺で「歌舞伎十八番」ならではの大らかさを表現します。
 
 煙管に限りませんが、歌舞伎の小道具はやはり「誇張」が基本、一見リアルなようでいて実際のものより大きく、そして派手に出来ています。客席から見てそれとわかるようでなければいけませんし、また衣裳や化粧が大変立派ですからそれらとちゃんとバランスが取れるように配慮されています。計算されているような、いないような・・・昔の人のバランス感覚はさすがに大したものです。
 
 

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