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その8  「顔見世」が11月なのはなぜ?
 来月はいよいよ「顔見世」。この「顔見世大歌舞伎」という興行タイトルは、字面と云い響きと云い、いかにも歌舞伎らしく、どことなく華やかさと賑やかさを感じさせてくれます。江戸の芝居町ではそれぞれの芝居小屋が毎年11月に年間の専属俳優を決めていましたので、『当一座は向こう一年、この顔ぶれでお贈りします』といったお披露目の場がすなわち「顔見世」でありました。余談ですが、ちょっと現代に置き換えてみるとプロ野球の「ドラフト」に似ていませんか? そういえばこれも11月ですね。
 さて、この年間契約のシステムも江戸の末期には崩れ始め、今では「顔見世」といえば豪華顔合わせの意味が大きく、歌舞伎座をはじめ京都南座、名古屋御園座などの看板興行となっています。
 ところで「顔見世」が「11月」と決められたのはなぜでしょう? 来年のことを発表するのですからちょうど11月あたりが妥当なのでしょうが、そればかりではなく、どうやら江戸の興行師の商売上の知恵もしっかり働いたようです。
 
 旧暦で11月といえばもう真冬、暖房もろくにない時代ですから芝居見物もままならず、さらに師走から正月を控えて庶民の財布の紐もついつい固くなるところ。そこで正月を先取りして「顔見世は芝居のお正月」と銘打って目先の変わった興行を打ってみると・・・・これが新しいもの好きの江戸っ子にうけて大当たり! というわけで「芝居町には正月が二度やって来る」と大賑わいになったとか。
 歌舞伎座の「顔見世」では、毎年正面玄関の真上に立派な「櫓(やぐら)が組まれています。紺地に白で鳳凰丸の紋が染め抜かれ「木挽町 きゃうげんづくし」と書かれた粋な姿は古き芝居町の名残を伝えてくれます。
 「櫓」というのは、江戸の芝居小屋が興行を許されていることを示す許可証のようなもので、実は「顔見世」と直接の関係はありませんが、「顔見世」という古式ゆかしいイベントに風情あるひと味を加えて、ちょっとした雰囲気作りに役立っています。

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