本年11月30日に京都南座で開幕する「坂田藤十郎襲名披露」を前に、10月26日、歌舞伎座にて中村鴈治郎最後の舞台『心中天網島 河庄』が千穐楽を迎えました。終演後、鳴り止まない拍手に応え、鴈治郎が再び舞台に現れました。
 「鴈治郎の名跡最後の舞台をこうして大勢の皆様方に見ていただきまして、本当に役者冥利、ありがとうございました。 ちょうど、今から15年前、ここ歌舞伎座でやはり河庄の治兵衛を勤めて、三代目鴈治郎を襲名させていただきました。そして15年経ち、また同じ河庄の治兵衛を勤めて、鴈治郎の名前を終えさせていただきます。こうして15年間、鴈治郎の舞台をみていただき、ご贔屓いただきましたのも、皆様の応援の賜物と、厚く厚く御礼申し上げます。 最後最後と申しましても私が最後ではありません。私はこれから坂田藤十郎として生まれ変わるのです。 京都の顔見世興行を皮切りに、来年の初春興行はこの歌舞伎座で藤十郎の襲名披露をさせていただきます。私、まだまだ元気でございます。 上方歌舞伎隆盛のために一生涯一生懸命芸道精進に尽くす覚悟でございます。どうか、新しい坂田藤十郎をいついつまでもご贔屓たまわりますよう、この場より皆様方へ心よりお願い申しあげます。 この感激は一生忘れません。もっともっと上方歌舞伎発展のためにがんばります。本当にありがとうございました。」

 終演後、記者から今の気持ちを尋ねられると「15年間勤めさせていただいた鴈治郎という名前、今日を迎えるのは感無量でした。ただ、私の場合、これで終わってしまうということではありません。次がありますからね。前へ進むというのが自分の信念でございます。もっともっと切磋琢磨して進んでいくということが男の道だとおもっています。」
 藤十郎という名前に新たに挑戦される今の気持ちを尋ねられると、「藤十郎といえば、上方歌舞伎の創始者でシンボル的存在。非常にインパクトも強いし、そういう方が体に入ってきてくれると力もつきます。どういう風に(以前の藤十郎が)思ってらっしゃるかわからないけど、“しっかりやれ”と応援してくれてる気がしてるんですよ。(襲名は)あたらしい出発、スタートライン。私だけではなく、上方歌舞伎全体、後輩たちも育てていかなくてはならない。全体像を見ながら進まなくてはいけない・・・そういう意味で今までとはちょっとは気持ちが違います。」
 襲名を前進する力に変えて、前へ前へと進む鴈治郎さん。新・藤十郎の誕生と上方歌舞伎の更なる隆盛に期待が膨らみ、襲名披露興行がますます楽しみになります。
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