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 相撲のTV中継で有名なのでご存知の方も多いでしょうが、興行の世界では最終興行日を『千秋楽』(せんしゅうらく)と呼びます。歌舞伎座では呼び方は一緒なのですが、あえて文字では『千穐楽』と書きます。これは劇場の大敵“火事”を追放するために、“火”の文字を避けて、縁起のいい“亀”の文字を使用しているためだそうです。
 ところで、今月も歌舞伎の『千穐楽』、通称『楽の日』を迎えることができました。この日の朝10時からは、鐵砲州稲荷神社が祭られている歌舞伎座稲荷に宮司さんをお招きして、歌舞伎座の各部署の責任者が参列してお祓いを行います。
 その後すぐに正面ロビーにて、全体朝礼が開催されます。参加するのは、興行を主催する松竹(株)の社員の他に、食堂と売店を担当する歌舞伎座事業(株)、建物を管理する(株)歌舞伎座、その他テナントや協力会社など、お客様にサービスを提供するスタッフが中心です。
 『千穐楽』を無事迎えられたことを祝う、金田支配人の「おめでとうございます」の言葉に始まり、続いて山本副支配人からは、様々な分野での安全と注意事項の確認が細かく行われます。
 現在の歌舞伎座は、明治時代に始まった新劇場運動(当時珍しかった椅子による観劇スタイルなど、西洋のシアターシステムの導入ムーブメント)と、世界でも例のない会食と観劇を同時に楽しめる芝居小屋としての伝統文化の両方が、現在も脈々と息づいています。そのため歌舞伎座は、粋な因習と近代の劇場システムが入り混じった運営の実態が、私の目には大変ユニークな風景として映ります。
 さて明日からは、歌舞伎座は休む間もなく、次月興行の準備が慌しく始まります。歌舞伎座は停まることはありません。
写真と文章・アジャスト田中伸明
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