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幕左 『おっ、今月の担当さんか?よろしく!』
幕右 『いえいえ、こちらこそ』
幕左 『毎月入れ代わり立ち代わり大変だね…。』
幕右 『でも1ヶ月間だけですからね。
精一杯務めさせてもらいますよ!
ところで、おたくは、いつまで勤務なのですか?』
幕左 『私?そうだね、季節があと3回変わったら
お役御免かな?…。』
 
ひょっとしたら、2人の間ではこんな会話があるのかもしれません。
雨にも負けず、風にも負けず、歌舞伎座にお越しいただいた御客様を正面玄関にて出迎え、また街行く方々には、その堂々たる姿で自分自身をアピールしています。
歌舞伎座が休館日であっても、休むこと無く仕事を続けているので365日間彼等の姿を見ることができます。
御紹介が遅くなりました。彼等は、『懸垂幕』(けんすいまく)と呼ばれています。
身の丈は30尺(約9m)、巾は6尺(約1,8m)もあり、遠くから眺めるとさほど感じませんが、真下から見るとその大きさに圧倒されます。特に風の強い日などは、その大きな体からより一層の迫力を感じることでしょう。ただ、その大きな体ゆえに春風をまともに受け止めてしまうと幕を支える金具やワイヤーと一緒に飛ばされてしまう恐れがあるのです。
でも御心配なく。『懸垂幕』の破損を防ぐ為に、事前に幕の中心部の3箇所に渡って『切り込み』が入れてあり、風の抵抗を少なくする工夫がほどこされています。ただ、せっかく綺麗に描かれた『懸垂幕』に穴をあけるのは、見栄えも悪くなることですし、少々もったいない気もしますが、想定される事故を未然に防ぐ為に、最小限のダメージで防ぐという考え方なのです。これは歌舞伎座だけではなく、社会の様々な所で見られる人間が長い歴史の中で生み出した知恵ですよね!
さて『懸垂幕』は千穐楽を以って御役御免となるのですが、初日に掲げられた時と比べると、2kg〜3kg重くなっているそうです。なぜだと思いますか?
それはきっと御客様の喜びや感動を春風と共に受け止め、歌舞伎座の建物と共に1ヶ月分の歴史を積み重ねた結果なのではないでしょうか?
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