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右手に見える白いモノはお清めの盛塩。“千穐萬歳大入り叶”(せんしゅうばんぜいおおいりかのう)と、「歌舞伎稲荷大明神」に興行の成功を出演者全員が祈願する思いが込められています。

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 昭和通りに面している歌舞伎座の楽屋口には、歌舞伎俳優はもとより多くのスタッフが出入りしています。その場所を管轄しているのが「頭取」と呼ばれる人物で、幕の内(出演者や制作関係者の総称)の流れをすべて把握するのが主な仕事だそうです。
 この「頭取」の席にあって、ひときわ目立つ位置に置かれているのものが、「着到板」と呼ばれる桧板です。実際に撮影中にも、歌舞伎俳優の方々が次から次へと厳かにご挨拶しながら、ご自分の氏名が記させた穴に赤色のピンを差し込んでいかれました。
 この「着到板」は、いわば舞台出演者を対象としたバックステージのタイムカードの役割をはたしていて、「狂言方」と呼ばれる歌舞伎の進行係が、毎月の演目に併せて製作しています。
 出演者の多い月には、約300人近いお名前が「着到板」に記されることもあるとのこと。ほぼ出演順に歌舞伎俳優のお名前が書かれていますので、関係スタッフが歌舞伎俳優の楽屋入りの時間を確認することができる合理的なシステムです。
 現在も全国のいくつかの劇場でこの「着到板」方式が採用されていますが、歌舞伎小屋が発祥だそうです。
写真と文章・アジャスト田中伸明
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