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 今月の「海老蔵襲名興行」をご覧になった方にはもうおなじみかと思いますが、この襲名のために、素敵な祝幕が二枚贈られています。
 
 昼の部の開場と同時に客席に入ると、舞台上で出迎えているのは、勇壮な「荒磯」の柄に團十郎家の定紋「三升(みます)」が柿色で描かれた、いかにも成田屋らしい大きさと勢いのある幕。
 
 「荒磯」は「鎌輪ぬ(かまわぬ)」などと同様に團十郎家ゆかりの柄のひとつで、浴衣にも染め抜かれて使われますが、どちらかというと「團十郎」よりは、若々しい「海老蔵」の名前に似合うようです。この「荒磯に三升」の幕の贈り主は「クロネコ」のヤマト運輸です。
 
 「暫」の幕開きになると新たに登場するのが「海老」の柄の祝幕です。「海老蔵だから海老」というのは実に簡単な理屈ですが、かといって単純に海老の絵に決めれば?・・・・とは行きません。いかにも「食べ物の海老」になってしまっては興醒めですし、妙に漫画っぽくなってもいけません、海老の柄を使うというのは大変に難しいものです。
 今回の幕はいろいろなアイディアが出尽くした結果、襲名祝いの扇子用にと團十郎さんが描いた「海老図」をさらに大胆にデザインし、誠に贅沢な逸品となりました。この幕は「お~いお茶」のCMでおなじみの伊藤園から贈られています。
 夜の部では入れ込み時に「海老図」の幕が使われ、「襲名口上」には「荒磯」の幕が使われています。ついでながら「勧進帳」の開幕は引き幕ではなく緞帳(どんちょう)ですので悪しからず・・・・六月興行にもこの二枚の祝幕が引き続き使われます。

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