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芝居に欠かせない『柝(き)の音』 誰が打っているのか御存知ですか?
実は黒い衣裳をつけた狂言作者が舞台のソデで打っているのです。(運が良いと客席から見えるかもしれませんよ) 
【狂言作者の仕事】

狂言作者の仕事を分かりやすく言うと歌舞伎の舞台進行と文芸部的な仕事があります。その仕事は手紙、小判をはじめとする小道具に文字を書いたり(あれ、全て狂言作者の手によって書かれたものなんですよ)その他、書き抜き(台本からセリフを抜き書きしたもの)を書いたり、次の興行などの台本をまとめたり、いつも休む間もなく働いています。狂言作者の仕事はそれだけではありません。
芝居の開演前、狂言作者は大道具や小道具の位置を確認したり、舞台の凹凸、釘などがないか細部に至るまで目を配っています。また開幕30分、15分、5分前などに楽屋や舞台に柝を打ってまわります。その柝によって俳優さんから舞台に携わる全ての人々が動き出します。
そして開幕時間、観客を芝居の世界へと誘う、“あの小気味良い柝の音”で幕が開きます。開幕中も盆(廻り舞台)や船など舞台上の物を動かすキッカケ(スタートの合図)を出したりと、その仕事が多岐に渡っている事は、お分かり頂けると思います。
【柝を打つこと】

舞台進行に必要な柝は樫の木で出来ています。一本の木から二、三組しか取れないものです。普段は作者部屋の専用の棚に保管されている事からも、その大切さ、貴重さがわかります。柝を打つ厳しい練習の後、約半年後には開幕を任されるようになり、さらに二、三年の経験を積み、初めて閉幕の柝を務める事ができます。
閉幕の柝は舞台を締める重要な役目。その為、俳優さんとの息を合わせ間を掴む事が大切でそれだけ経験が必要となっていきます。

以上のことから際するところ、これだけの仕事をするには歌舞伎を心から愛する狂言作者だからこそできる仕事なのだと思います。
ぜひ観劇の折、狂言作者の打つ柝に何か感じて頂けたらと思います。

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