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享保二十年(1735)刊の江戸の古地図。江戸城(右上)と海に浮かぶ船の間付近が
今の歌舞伎座にあたります。まさに江戸前。(歌舞伎座百年史より)
今回は、食堂の宣伝も兼ねまして御紹介致します。
興行中の歌舞伎座の厨房では、毎日お客様の注文にあわせて『寿司』が握られています。今捌かれている魚は、東京湾で獲れた『コハダ』です。昔から庶民の味として親しまれ、『江戸前寿司』の定番と言って良いでしょう!
(Q1)但し、歌舞伎座では『マグロ』や『イクラ』など、東京湾では獲れないネタも使っているのですが、本当に『江戸前』と呼んで良いのでしょうか?
 
所変わってここは『神奈川県』にほど近い東京湾。見事な『鯖』を釣り上げたのは、以前『グルメ探訪』にて『うなぎ』を調理していた職人さんです。『ハマちゃん』顔負けの釣果が出て、ほっと一安心!頭の中では釣った魚が既に『味噌煮』や『塩焼き』に姿を変えている事でしょうが…。
Q2)もしこの『鯖』をネタに自分で寿司を握ったら、『江戸前寿司』と呼んで良いのでしょうか…?
 
(Ans)そもそも『江戸前』とは『江戸城の前』を意味しながら、隅田川の両国から河口周辺の築地で獲れた『うなぎ』の代名詞として使われていました。それが時代と共に『うなぎ』だけではなく魚や貝も含むようになり、それと同時に『江戸前』の領域も徐々に広がり、今では『三浦半島の剣崎と房総半島の洲崎を結んだラインより内側の海域』(早い話が東京湾の全域)まで広がりました。
よってQ2に関しては、『江戸前』と呼んで良いでしょう!
 
また、水産庁では『職人によって高められた粋な料理を江戸前と認める』としています。昔から江戸の庶民に馴染みのある相模湾の『タコ』や外房の『貝類』はもちろんの事、東京湾以外の海域で獲れたものを使っても『江戸前』として提供する事は問題ないとしています。
これにより、Q1も『江戸前』と呼べるのです!
歌舞伎座は江戸城の前と呼べる『場所』であり、東京湾で獲れた『食材』が揃い、粋な『職人』が握る『江戸前三拍子』の寿司を提供しています。
次回のご観劇の際には、是非ご賞味下さい!

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